鍼灸の歴史とその将来
「今おこなわれている医学は、約二世紀前にウイルヒョーという学者が顕微鏡によって細胞を観察し、有名な細胞病理学説を発表し、一時はそれがすべてであるかのごとく支配的でありました。
従って、今までの医学ではその病原を追求し、冒された細胞を神経刺激や血液循環によって回復せしめ、あるいはその病巣を切り取ったり取り替えるという、いわゆる時計修繕医学ができあがっていました。
しかし、現在は環境の不良化によって体内的な多臓器間の機能的アンバランスにより発生する病気が多いので、病原を攻撃したり切り取るという医学だけでは対応しきれないようです。
しかし、東洋医学は五千年前の夏・殷・周時代に始まり、口から口へ手から手へと伝えられ、今から二千年前に素門・霊枢・難経などの古典に書き残され、仁術として東洋民族とともに発展してきました。我が国には紀元六百年頃の飛鳥・奈良時代に仏教とともに伝わり、平安、鎌倉、江戸時代を経て優れた学者を生みつつ今日に伝えれられています。
その治療法は時計修繕学とは根本的に異なり、経絡という生命統制のメカニズムを整えるポイント「ツボ」に鍼灸を施して、生体の生き抜く力、病を治す力、すなわち生命力を強化するという理念に立つ治療法であります。
最後に、近年は過剰な情報ストレス社会で様々な慢性疾患を抱えた方が増加しており、西洋医学的な治療だけではその根本的な治癒も困難なようです。生活習慣などを是正し、自己治癒 力を高めるために、心と身を一体としてとらえ身体全体のバランスとリズムを取り戻すことで病を癒すという「心身一如」の思想に基づいた東洋医学の考え方も必要になります。
日々の健康のために、西洋医学と東洋医学の良いところを選択され、上手に当院を利用していただければ幸いです。